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  • 2015/01/30(金) 03:59:13.28
「シニフィアンとシニフィエ」

耐えきれなくなって口の端からこぼれた言葉を、やさしくすくってあげられる人になりたかった。
うずくまって泣いているだけで、そんな風になれると思っていたの。
本当は私にもそんな才能があって、今はほんの少し眠っているだけなんだって。いつか誰かが揺り起こしてくれて、自分のやさしさに触れるだろうって。
そんな風に今に甘えて、うずくまったまま歳だけを重ねた。
簡単に、呆気なく、いつの間にか、当たり前に、大人になってしまった。
こんなはずじゃなかったんだよ。
ねぇ。君の口からこぼれてる言葉を、ただ見てるで、きらきらと光って、フローリングで弾ける言葉を、私はただ見てるだけ。

フローリングが冷たいなんてこと、別に知りたくなかった。
けど、また私は馬鹿みたいに座り込んで、膝を抱えてうずくまって、煙みたいに立ち昇る感情で、どんどんなんにも見えなくなる。
自分。じぶん。じぶん。やさしいじぶん。
蜃気楼が私の前に現れては、触れることなく消えていく。
本当は、泣きながら走っていったあの子のこと、追いかけなきゃいけないの知ってたんじゃないの。
どうだろう。
もくもくと充満する真っ黒な煙で、見えないよ。
自分も、それ以外も、もうなんにも、見えない。

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