facebook twitter hatena line google mixi email
★お気に入り追加


  • 312
  •  
  • 2021/06/15(火) 22:50:48.22
>>309
普通に原作にあるだろ
    ↓

「あるときはパルスの軍師、あるときは宮廷画家、あるときはダイラムの領主、
そしてあるときはゾットの族長……」

ここぞとばかり、ダリューンが親友に憎まれ口をたたいてみせた。

「じつに多彩な人生で羨望に値するじゃないか、ナルサス」
「そう思うか」
「思うとも」
「では代わってやる。おぬしがゾット族の族長になったらどうだ」
「とんでもない。おれは友の幸福を横どりするような男ではないぞ」

ダリューンが一笑すると、反対方向からナルサスをとがめた者がいる。
女神官(カーヒーナ)のファランギースであった。

「失礼じゃが、ナルサス卿、そもそもおぬしがよくない。
 アルフリードの心ははっきりしておるのじゃ。
 男のほうが態度をさだめねば、女のほうは何を頼ってよいかわかるまい」

ひと呼吸おいて、さらにつづける。

「心さだまった女性がおるとか、生涯独身をつらぬくとかいうのでなければ、
 そろそろ真剣におなりになったがよかろうと思う。よけいなこととは承知しておるが」
「そうはいうがな、ファランギースどの……」

反論しかけて、ナルサスは口を閉ざした。
美しい女神官の緑色の瞳に、冗談ではすまない表情がたたえられていることを悟ったからである。

思えば、ファランギースがミスラ神の神殿に仕えるようになった事情について、
仲間たちは何も知らないのであった。
何かにつけてファランギースにまつわりつくギーヴも、
あえて彼女の過去を問おうとはしなかったのだ。
本人が進んで語らぬ以上、それを問いつめるような野暮は誰もがつつしむべきであった。

ここまで見た

★お気に入り追加

このページを共有する
facebook twitter hatena line google mixi email
おすすめワード