facebook twitter hatena line google mixi email
★お気に入り追加


■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

  • 1
  •  
  • 2012/03/07(水) 10:19:08.62
【テンプレートは >>1->>4 くらい】

スレタイの通り、ロボットやアンドロイド燃え・萌えを語りましょう。

《前スレ》

ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α10
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1285775886/

《過去スレ》

ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1004855813/

ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1078822739/

ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1138366962/

ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1150463153/

ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1164199888/

ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α6
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187951829/

ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α7
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1196249405/

ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α8
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1219502527/

ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α9
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1247619319/

ここまで見た
  • 834
  •  
  • 2015/05/17(日) 14:35:09.90
投下乙でございます
新キャラがいっぱい出てきましたね。
ファムロイヤル監察官も、なんか私怨で主人公をいじめている感じがしましたが、和解?できたみたいでよかったです。
しかし、事実上、主人公達をバックアップしている都知事が敵側の勢力にべったりでは、後が怖いですねぇ・・・(滝汗
ここまで見た
  • 835
  •  
  • 2015/05/30(土) 02:34:58.33
相変わらず面白いけどアンドロイドキャラの活躍をもっと
やられ役でいいから敵にも欲しいな
ここまで見た
「で……どうするの……?」
 本庁から独身寮へと帰る道すがら、タンデムシートからシズカが尋ねてきた。
 フェデリア・ファムロイヤル特命監察官の申し出を受けるか、それとも否かについてだ。
 監察の手先となってティム・タイラー人事一課長の専横を妨害するか、もしくは規律違反の廉で重い処分を食らうか。
 高度に政治的な案件である。
「やっぱり、僕には身内を捜査するなんてことはできそうにないよ」
 そういうことを平気でやってのける、特命監察の連中は本当にすごいと思う。
 嫌味じゃなく、並の精神力でやれることじゃない。
「精一杯反論してみるよ。僕たちがやったのは正当防衛だって、頑張って認めさせよう」
 それしかないと、僕は決意した。
 だが、ファムロイヤル警視は、かなり凄腕の調査官であるらしい。
 どんなに図太く恥知らずな悪徳ポリスでも、最後には必ず罪を認めてお縄につくという。
 シュガー姉妹の「顔面騎乗の刑」に匹敵するような、想像するのも恐ろしい秘策を駆使するに違いない。

「取る手はもう一つある……人事一課の傘に入り……監察の追及をかわす……」
 シズカはたまに鋭いところを突いてくる。
 こういった「敵の敵は味方論」は、僕にはできない発想だ。
 ミナモンテスの重臣である特命監察官につくか、ティラーノ総帥の義弟である人事一課長につくか。
 どちらかにつけば、僕は国際貴族の代理戦争に巻き込まれることになる。
 できることなら、連中の争いには関わりたくない。
「なら……論戦で頑張るしかない……シズカも応援する……」
 つか、全部君がやっちまったことなんだけどな。

「それより今日はゴメンな。メンテナンスしてやれなくて」
 あのヤクザ騒動がなけりゃ、冷却液の交換をしてあげてたのに。
 また、近いうちにやってあげなくては。
「で、交換ってどうやるんだい? 手順だけでも教えておいてくれよ」
 予備知識があった方が、本番で手際よく事が運ぶだろうから。
「古くなった液を排出し……新しいのをタンクに注入するだけ……」
 意外に簡単な作業なんだと拍子抜けする。
「けど、排出口なんてあったっけ。君の身体のことはだいたい知ってるけど」
 まさか、悪魔祓いの古典映画みたく、口から緑色のゲロを吐くんじゃないだろうな。
「排出口は……添加剤補給口の上に……設置してある……」
 えっ?
「そのまま……トイレで流せて……便利だし……」

 それを聞いた途端、僕は右へ舵を切っていた。
 確か、この先に人気のない寂れた神社があったはず。
 記憶が正しければ、堀川神社とか言ったっけ。
 その裏手に小さな駐車場があり、パトロールをサボるときによく使っていたのだ。
 猛スピードで路地を突っ切り、目的の駐車場に突っ込む。
「クロー……急に……どうしたの……」
 僕はベンから飛び降りると、シズカの手を引いて本殿裏の茂みへと連れ込んだ。
 辺りに人気がないことを確認してしゃがみ込む。

「さぁ、さぁ、さぁ、さぁ」
「こんなところで……何を考えてるの……」
「うちに帰ってからじゃ、とても無理だろ。ここなら誰も見ていないし」
「そういう問題じゃ……ない……古い液を排出しても……入れ替える冷却液が……ない……」
 その心配はない。
 境内の横手にお手洗いがあるの知ってるから。
「トイレの水が……代替液に使えるわけない……吸熱剤入りの専用冷却液が……必要だから……」
 あら、そうなの。
「けど、ちょっと出すだけならいいでしょ。お願いします」
 僕は土下座スタイルをとって、地面に額をこすりつけた。
「どうしても……見たいの……?」
「はい、どうしても見たいのです。お願いします」
「クローの頭……どうかしてるわ……」
 遂に根負けしたのか、シズカはため息をつきながら立ち上がった。
 そしてフリフリのペティコートを掻き分け、可愛らしいパンティを膝まで下ろすと、再度その場にしゃがみ込む。
ここまで見た
 僕は横向きに寝ころび、シズカのその部分をガン見できるように顔を近づける。
 プックリした部分に刻まれた縦一文字を割ってやると、見慣れた蛋白燃料の注入口の上に、目的の排出口があった。
「リザーバータンクの……ロワーラインを……越えると危険だから……」
 いや、そんな目視できない目盛りの話を持ち出されても困る。
「で、どうやって出せばいいの?」
「その辺りを……ツンツンしてれば……センサーが刺激を拾って……ドレイン弁が弛むから……」
 どういった仕組みなんだ、その変態システムは。
 彼女たちウーシュタイプって、徹底して一人暮らしの要人を飽きさせない造りになっているんだなあ。
 マシンとしていいのかどうか分からないけど、言われた通りやってみる。

「こうかい?」
 人差し指の先端部を使って、穴の周囲をなぞるようにして円を描く。
 シズカが一瞬ビクッと反応し、僕までつられて手を引っ込める。
「ゴメン、痛かった?」
「よく分からないけど……なんか変……」
 僕は指をひと舐めしてから、もう一度その部分に攻撃を仕掛ける。
 ふぅっと息を吹きかけたり、周辺をソフトタッチで触っていると、シズカの鼻息が荒くなってきた。

「クロー……やっぱりヤメて……シズカ……変になる……」
「止めてって言われても。蛋白燃料の注入口から潤滑剤が溢れてきてるんだけど」
 普段は異物混入を防ぐために、みっちり合わさっているその部分は、蛋白燃料を注入するときだけ弛緩する。
 そして弛んだ部分からローションが滲み出てくれば、燃料棒の受け入れ態勢が整ったサインなのだ。
「どうして関係ないところから液漏れ起こしてるの? 仕様だから?」
「知らないっ……も…もうヤメて……」
 白々しい拒絶なので、言うとおりに指を止めてみる。

「や……やっぱり……ヤメちゃダメ……」
 お許しが出たところで、いよいよちっちゃな穴の中に指を差し込んでみる。
「ひぐぅっ……」
 押し殺した悲鳴とともに、シズカの背中が反り返るのが分かった。
 一瞬こっちがビビッてしまったが、気を持ち直して責めを再開する。
 小さく出し入れを繰り返した後、挿入した指先をこね回し始めたときだった。
「ダメ……クロー……来る……凄いの来る……」
 シズカの喘ぎ方が劇的に変わった。
 はしたない、というか神社の人に聞こえちゃうだろ。
 注意してやろうとしたが遅かった。

「もう無理……もうダメ……これ絶対耐えられない……ダメェェェッ……」
 ひときわ高い声で絶叫が上がり、シズカの身体がブルッと震えたと思ったら、いじっていた穴から液体が噴射された。
 一気にドレイン弁が開放されたのか、高圧洗車機並みの勢いでシズカの股間から液体がほとばしる。
 ガン見していた僕が、思いきり天罰を受けることになったのは言うまでもない。
 熱さも臭いもほとんど無い液体だったことだけが、不幸中の幸いであった。

 肉体的、精神的ショックが癒えるまでしばし、僕とシズカは黙ったままその場にうずくまっていた。
 先に口を開いたのはシズカの方だった。
「どうしよう……タンクのほとんどが……排出されてしまった……」
 車でいうところの、ラジエータが空になったってことか。
 このまま無理に走れば、あっという間にオーバーヒートだ。
「クローのせい……弄り方が……嫌らしいから……」
「嫌らしいのは君の方だろ。なんだよ、興奮しすぎてお漏らししちゃったくせに」
「あんなに……ねちっこくやれとは……指示していない……やっぱり変態……」
 悪いのはあくまで僕であって、自分の締まりのない股ぐらには責任ないんだ。
 まあ、今の状態であまり怒らせない方がいいかもしれない。
 熱暴走して暴力でも振るわれたらかなわないから。
 って、言ってるそばから、焦げ臭いにおいが漂ってきた。

「いやゴメン、確かに僕がねちっこすぎたかもしれないな。取り敢えず、冷却液を買いに行こうじゃないか」
 ラジエータを満たすまで、なんとかご機嫌をとっておかないと。
「クロー……焦げ臭い……」
「だから早くバックスに行こうって。レーサー用の最高級冷却液を買ってやるから」
ここまで見た
 どうやって入れるのか知らないが、想像するだけで色々興奮する。
「違う……これは……ナパームが……燃えている……」
 言われてみると、これは油が燃えている臭いだ。
 はっと振り返ると、木々の向こう側、拝殿の辺りから黒い煙が上がっている。
「これはただの火事じゃない、行こうっ……って、君は走っちゃダメだからゆっくりだぞ」

 今は夕食の時間だが、ナパームを使った揚げ物料理なんか聞いたことない。
 これは放火、しかもかなり悪質な奴だ。
 ナパームを使用すれば現場検証で直ぐにバレるから、失火を装った保険金詐欺じゃない。
 こういう放火は強襲、すなわち単純に人殺しが目的なんだ。
 ともかく初期消火と、可能であるならば被疑者の確保だ。
 いや、被疑者はとっくに逃げているだろうから、目撃者から事情聴取して本庁の通信指令課に手配しよう。
 脳内でシミュレートしながら本殿の裏から境内に回り込むと、なんと被疑者はまだそこにいた。

 鳥居から拝殿に続く参道に、いるわいるわ20人ほどのヤクザ者が、これ見よがしに銃器を手にして立っている。
 そして全員の視線が一点に集まる場所、拝殿前の階段に連中の敵がいた。
 袖無しの白い胴着に、ミニの赤いキュロット――巫女だ。
 生足まぶしい巫女VS厳ついヤクザ軍団という、何ともシュールな光景に僕は一瞬息をのんだ。
 しかし、本当に驚いたのは、巫女がこちらを振り返った時であった。

「鶴見巡査長っ」
 その瞬間、僕は悟った。
 ミーナ嬢の実家はこの神社で、オフの彼女は巫女として家業を手伝っている。
 そして、今日のお昼に彼女と揉めたヤクザどもが、今度は直接攻撃に出てきたのだと。
 人事一課長のティム・タイラーは、邪魔なミーナ嬢を力尽くで排除しようと本腰を入れてきたのだ。
 僕の叫びにミーナ嬢が気を取られた、その一瞬の隙を突いてヤクザどもが一斉射撃を始めた。
「危ないっ」
 思わず叫んでしまった僕だったが、ミーナ嬢はいたって冷静だった。
 右手に持ったプラズマソードのスイッチを入れると、飛来してくる弾丸を払い落としにかかった。
 20丁の9ミリバレッタが次々に火を噴くが、50メートルの距離があるから、ほとんどが目標をそれる。
 この距離で拳銃を有効な武器として使うには、それなりの修練が必要なのだ。
 それでも弾幕を張れば、目標に命中する確率が上がる。
 ミーナ嬢は危険な弾丸だけを選んで弾いているのだ、立ち位置をまったく変えずに。

「まさか、弾が見えている?」
 その証拠に、頭上スレスレに通過した弾には目もくれなかった。
 当たらないと分かっていたから、瞬きもしなかったんだ。
 だが、本当に凄いのは、音速より早い弾丸を剣で捉える技量だ。
 まさかとは思うが、弾丸の軌道もあらかじめ分かっているというのか。
 これはまるで伝説に出てくる「戦巫女」そのものではないか。
 戦巫女は天上の神々と交感し、この世の全ての事象を見通し、己の前世を知り、思うままに山海を飛行するという。

「クロード主任? どうして、こんなところに」
 ミーナ嬢は飛来する弾丸を弾きながら僕に尋ねてきた。
 その説明だけは勘弁して欲しい。
 女の子に嘘はつきたくないし、本当のことを言えば軽蔑される。
「そうだわ。火をお願いします」
 ミーナ嬢はそう言って、消火器の位置を指さした。
「う、うん」
 とにかく邪魔にならないよう、僕は拝殿の消火に専念することにした。

「あぁーっ、あいつでっせ」
「ワシらを騙して恥かかせてくれたんはっ」
 拝殿の壁に向かって消火剤を噴霧していると、聞き覚えのある関西弁が耳に入ってきた。
 振り返ると、センスの悪いスーツを着た小男と、相撲取りじみた大男のコンビがこっちを指さしてわめいていた。
 これはまずい連中に会ってしまった。
 2人は僕の嘘に引っかかり、ただのカメムシの死骸を質屋に売りに行ったのだろう。
 その後2人を襲った悲劇は、見てなくてもだいたい想像できる。
「おどれら、グルやったんやなぁっ」
 見苦しくわめき散らす2人に、味方から怒声が浴びせられた。
ここまで見た
「使えん下請けはすっこんでろっ」
 上等なダークスーツを着た幹部らしい男が怒鳴ると、2人はキャインとその場で飛び上がった。
「控えろ、若の御前である」
 幹部の後ろから、若と呼ばれた人物がのっそりと出てきた。
 年齢は僕と同じくらいのイタリー系で、こけた頬に冷酷そうな笑みを浮かべている。
 見るからに陰険そうな男であり、とてもじゃないが好きになれないタイプだ。
 どこの誰だか知らないけれど、こいつとは永久に仲良くなることはないだろう。
「下請けが迷惑かけたそうだね。謝りはしないけど」
 申し訳なさなど微塵も見せない態度で、若さまが冷笑した。
「下請け下請けって、あんたらもそうじゃないの?」
 よせばいいのに、僕はミーナ嬢の前でいいカッコしようとしゃしゃり出てしまった。
「組対三課長の下請けなんだろ?」
 僕がそう言った途端、若さまの顔から冷笑が消えた。
「どこまで嗅ぎつけたのか知らんが、捨ておけんな」
 若さまが内懐から9ミリバレッタを引き抜き、慣れた手つきで弾丸を装填した。
 ちょっと待て、どこまで効果的な売り言葉だったんだよ、さっきのは。

 今までミーナ嬢を狙っていた20個の銃口が、一斉に僕へと向けられた。
 こっちは帰宅途上で、支給品の拳銃は返納してるってのに。
 これはいきなり大ピンチだ。
「スェード坊ちゃん、こいつは生かして帰すわけにはいかねぇですぜ」
 幹部の男もマシンガンを構え直す。
 スェードって──どこかで聞いたことがある名前だ。
 誰だったか僕の知り合いが、ボロクソに貶していたような覚えがある。
「このままじゃ、カディバの本家にまでサツの手が回っちゃいまさぁ」

 ああ、それだ。
 スェード・カディバだ、ありがとう。
 確か親の七光りとかって、貶していたのは情報屋のヒューガー・イッセーだったな。
「……って、お前ら、カディバ一家かよっ」
 あのコリーン嬢を僕ごと誘拐した、ティラーノの傍流に当たるマフィアの一家だ。
 なるほど、確かに見覚えのある顔が幾つか並んでる。
 同時に、向こうも僕に気が付いたようだ。
 互いにポカンとした顔を見合わせていると、一つまた一つとバレッタの銃口が下がっていく。
 それに気付いたスェードが、不審そうに顔をキョロキョロさせる。

「クロー……何をしてるの……火事は……?」
 遅ればせながらシズカが登場すると、カディバ一家の連中は一斉に拳銃を捨てて両手を上げた。
 幹部の男もマシンガンを地面に置いて、スカーフを白旗代わりに掲げている。
「お前らどうしたんだ。何を勝手に降参してやがるっ」
 一人、スェードだけが拳銃を振り回して子分たちを鼓舞する。
「お前ら、コントやってる場合じゃないだろっ。早く奴らを撃ち殺せっ」
 無理だろ、シズカの恐ろしさが身に染みて分かってるそいつらには。
 なにせ、素っ裸の彼女に拳銃を持って襲いかかり、返り討ちで死ぬほど酷い目にあわされたのだから。
「若っ、早く拳銃をお捨てなすって。早くっ」
 信頼する幹部に諭されて、スェードは訳の分からないまま武装解除に応じた。
「後でちゃんと説明してもらうぞ、カッポーニ」
「生きてブタ箱に入れてもらえさえすりゃ、幾らでも説明させていただきやす」
 そう唸る幹部も、怖くてシズカの顔を見ることすらできないようだ。

「これはどういうことなのです、クロード主任」
 いきなりヤクザたちが逃げ腰になったことで、ミーナ嬢は驚きを隠せないでいるようだ。
「いや、彼らとはちょっとした知り合いでね。僕たちには絶対に勝てないって、よく分かってるんだよ」
 で、どうするって、僕は目で尋ねてみた。
 ミーナ嬢は少しの間だけ目をつぶっていたが、やがて口を開いた。
「二度と来ないと約束するのなら、事を公にするつもりはありません。早々に立ち去りなさい」
 えっ、それでいいのか?
 現認が充分な上、証拠も犯意も明らかだから、確実に起訴できるんだけど。
 まあ、当の被害者がいいってのなら、その意思は尊重することにしよう。
 何か表沙汰にしたくない、それなりの理由があるんだろうし。
ここまで見た
 お許しが出た途端、手下どもは我先に鳥居の方へ全力疾走を開始した。
 幹部のカッポーニだけは、大事な若さまを庇うようにして、それでも小走りに去っていく。
 鳥居をくぐる際、スェードが思い切り憎しみを込めた目で僕をにらんできた。
 美人の前で恥をかかされることは、彼らシシリアンにとって最大の屈辱なのだ。
 相当に恨まれてしまったようだが、こんな奴が僕の人生に関わってくるとも思えないので気にしないことにする。
 それより、これで確実にティラーノ派を敵に回してしまったことの方が大変だ。
 連中が報告すれば、ティム・タイラーは僕が敵対したことを知ってしまうだろう。
 成り行きとはいえ、少々軽はずみだったのではないか。

「危ないところをありがとうございます。これで二度目ですね」
 連中の姿が境内から消え失せると、ようやくミーナ嬢は愁眉を開いた。
 ペコリと頭を下げると、奉書紙で作られた白い髪飾りが、蝶のように軽やかに羽ばたく。
「さすがはサイボーグ兵士4人を素手で殴り倒したという、あの帝都の若き英雄だけのことはあります」
 いやあ、ちょっとだけ事実と違ってるみたいなんだけど、今は訂正しないでおこう。
「道場以外で、君に剣を振るわせるわけにはいかないからね」
 僕はシズカを刺激しないよう、言葉を選んで返事をする。
 彼女の気に障るような文言が混じれば、CPUの温度を著しく高めてしまう。
「それより凄いね、君。飛んでくる弾丸が見えるんだ。ひょっとしてエスパー?」
 ミーナ嬢はそれには答えず微笑んだだけで、拝殿の床にしゃがみ込み、赤いふちどりが付いた胴衣の袖を拾い上げている。
 戦闘時には取り外しができる、デタッチャブル仕様の袖なんだ。

「でさ……」
 僕が更に質問を重ねようとしたときである。
「クロー……本番は今からみたい……囲まれている……」
 シズカが唐突に物騒なことを口走った。
「えっ、誰に?」
 キョロキョロと境内のあちこちを見回すが、敵らしい姿は見あたらない。
 ミーナ嬢も敵の接近を察知したのか、取り付け始めた袖を再度投げ捨てた。
 何がいるのかと身構えたが、塀沿いの植え込みから出てきたのは意外なものだった。

 身長130センチくらいのちびっ子ばかりが全部で11人。
 皆が真っ赤なレオタードを着ており、髪型もお揃いのおかっぱ頭だ。
 なんか不自然さを覚えて凝視したら、顔の造りまでが全員まったく同じであった。
 揃いも揃って猫目で、それが薄闇の中でギラギラと輝いている。
 こいつらアンドロイドだ。
 どことなくトモエ01型に似ているが、アレとは違って表情というものが全然ない。
 まさかと思うが、ポンタの技術をパクって製造した、トモエの劣化コピーなのか。
「何なんだ君たちは。サッカーの練習なら広場でやりなさい」
 年長者の義務として一応注意はしてみたが、反応があるはずもなかった。
「気をつけてください。ティム・タイラー子飼いのアンドロイド軍団、ボブキャッツです」
 なるほど、ボブカットの猫目少女だからボブキャッツなんだ。
「警察のアンドロイドなら大丈夫でしょ。人間相手に攻撃はできないんだから」
「こいつらにはアシモフ回路はセットされていません。違法な廉価版バトルドロイドなの」
 ミーナ嬢が鋭く警告を発する。
「ティム・タイラーの意思を過不足無く体現する、血も涙もないキラーマシンなのです」
 そういうのはもう少し早く言ってくれないと。

「とにかく、君は戦っちゃダメだ。人事一課長に口実を与えてはいけない」
 彼の目的は術科特練の解体だから、ミーナ嬢は矢面に立たない方がいいだろう。
 後でどんなイチャモンを付けてくるか分かったもんじゃない。
 となると、ボブキャッツを追い払うのは僕たち――というかシズカの役目だ。
 しかし、今のシズカは冷却機能が著しく低下している。
 相手の性能が未知数だけに、どこまで戦えるか不安だ。
「問題ない……相手はできそこないの……ガラクタ同然……」
 シズカはそう言って拝殿の舞台から飛び降りた。
「気をつけて。そいつらの指先は、レーザーメスになっているから」
 ミーナ嬢の忠告に耳を貸さず、シズカはフォーメーションのど真ん中に歩を進める。
 ボブキャッツは粗製濫造された廉価版だが、一応は新型バトルドロイドだ。
 名機の誉れ高いとは言え、既に旧式化したウーシュ0033で対応は可能なのだろうか。
 否、確かにハードは旧型の部類でも、シズカには優秀なソフトと蓄積してきた戦闘データがあった。
ここまで見た
 シズカは敵の一体に駆け寄ると、いきなり身を沈めて右の回し蹴りで足を刈った。
 足を掬われた敵は完全にバランスを崩し、後頭部を地面に叩きつけた。
 衝撃によりシステムが飛んだそいつは、一時的に行動不能になる。
 シズカはしゃがみ込んだまま、今度は右足を軸にして左後ろ回し蹴りで次のおかっぱ猫の足を刈る。
 同じく大きくのけぞった敵は、後頭部から地面に崩れ落ちた。
 上手いぞ、シズカは敵のレーザーメスが届かない位置から攻撃を仕掛けてるんだ。
 しかも、そのまま地面を転げ回り、とまどっているボブキャッツを蹴り上げていく。

 これは中国武術の一つ、地功拳の技だ。
 連中の戦闘ソフトに、下からのキックへの対処などプログラムされていまい。
 一方、シズカの学習コンピュータには、古い武術書などのデータが嫌というほど詰め込まれている。
 今では失われてしまったカンフーの技術なんかも、彼女のメモリー回路の中に脈々と息づいているのだ。
 大半は、僕が秘蔵する漫画や映画を元にしたテクニックなんだけど。
 だが、6体目までダウンさせたところで、シズカの動きがおかしくなってきた。
 それになんだか焦げ臭い。
 無理な動きがたたって、電脳と関節部が加熱してきたのだ。

 目に見えて動きの衰えてきたシズカは、徐々に防戦一方に追いやられていく。
 5体の連携攻撃をしのいでいるうちに、再起動した6体が戦列に復帰する。
 化け猫どもは次々にジャンプして、加速度をつけてのニードロップ攻撃を仕掛けてきた。
 シズカは仕方なく、立ち上がって防戦に努める。
「11体が相互リンクして戦っているのです。このままだと危険です」
 見た目は11体でも、その実、11本の触手を振りかざす1匹の巨大なイカってところか。
 他の仲間が次に何を仕掛けるか、全てを理解した上だから連携のあくどさが半端ない。
 上からの猫パンチに集中していると、がら空きになったボディにキックを受ける。
 左右からの攻撃をバックステップでかわすと、背後からカウンターを食らう。
 このままだと危険だ。

「シズカっ、構わないから火器をぶっ放せ。速射破壊銃をお見舞いしてやれ」
 相手が警視庁の備品だからといって、遠慮する必要はない。
 どうせ彼女らのマスターは、この不始末について「故障して誤作動を起こしました」で済ませる腹だ。
 二度とこのような不祥事のないように、深く反省してお詫び申しあげさせてやるんだ。

「わかった……」
 シズカの右手首がジャキンと音を立て、4本の指に仕込まれた加速管に鋼製弾芯弾が装填された。
 次いで火器管制装置の照準システムが標的の自動追尾を開始する。
 その刹那、11体のボブキャッツが一斉に飛び上がった。
 シズカは標的が飛び出す際の初速と角度から、冷静に軌道計算を続ける。
 次の瞬間、4本の指から火箭が迸り、ボブキャッツはバタバタと撃墜される――はずだった。

 が、現実のシズカはフリーズしたままボブキャッツの飛び蹴りを喰らい、砂埃を巻き上げて参道を転がっていた。
「おいっ、シズカっ」
 どうして撃たなかったんだ。
 まさか、熱暴走でOSがシャットダウンしたのか。
 シズカは起きあがろうとするが、バランサーが狂ったのか、生まれたてのインパラのように藻掻いている。
 そこへボブキャッツの追撃が襲いかかった。

 彼女たちは境内に設置されている遊具の鉄棒を握ると、軽々と支柱から引きはがす。
 それをシズカに向けて力任せに振り下ろす。
 背中や後頭部を強打され、シズカは再度地面に突っ伏した。
 無抵抗のシズカに対し無慈悲な殴打が続き、ガンガンと耳を覆いたくなる打撃音が上がる。
 双方が無表情のため、どこか現実離れした光景に見える。
 鉄棒がひん曲がり、役に立たなくなるまで滅多打ちは続いた。

 動かなくなったシズカに数体のボブキャッツがのし掛かり、ボディが動かないよう固定する。
 その上で、1体が腕ひしぎ十字固めの要領で右腕をねじり始めた。
 シズカの腕をねじ切ろうとしているのだ。
 肘の回線が切れたのか、ジョイント部からバチバチッと火花が飛び散った。
 同時にあがいていた手首から先がダラリと垂れ下がった。
 こいつら、シズカをバラバラに解体するつもりか。
ここまで見た
「お前ら、止めろっ」
 思わず飛び出した僕の腹部に、容赦のない横蹴りが叩き込まれた。
 僕は後方に吹っ飛ばされ、ミーナ嬢を巻き込んで拝殿の舞台を支える柱に激突した。
「おげぇ……」
 胃の中の消化液が全て逆流してくる。

 おかしい。
 僕やシズカがこれほどの目に遭っているのに、何故かリミッターが解除されない。
 強化装甲の完成部分も転送されて来ない。
 まさか、ミーナ嬢が見ている前だから、心理的なストッパーが掛かっているのか。
 それとも、リミッターカットを望むような余裕があるうちは、激昂できないというのか。

 こうなったら奥の手だ。
 僕はリストバンドの携帯端末を操作して、通話モードに切り替える。
「ベン、出番だ。ベンジャミンKC、カムヒアッ」
 僕が叫び終わるや否や、独特のエンジン音を轟かせて、愛機ベンKCが自律運転で境内に突入してきた。
「シズカを助けるんだ。遠慮は要らないから、こいつらをスクラップにしてやれっ」
 僕の指令を受けた忠実なロボカーは、咆哮を上げながらバトロイドモードにトランスフォームした。
 そしてシズカに駆け寄り、剛腕を振るってボブキャッツを払いのけた。

 一薙ぎに3体の糞猫が吹き飛び、ショックで機能を停止させる。
 装甲が貧弱なのか、彼女らの耐久性はかなり低いようだ。
 残りのボブキャッツたちはベンを敵と認識し、排除すべき優先順序の第一位として攻撃を開始した。
 ウェイトの差は如何ともしがたく、彼女たち渾身の飛び蹴りもスーパーヘビー級のベンには通用しない。
 レーザーメスを使った猫パンチも、ボディ表層を覆う無効化電磁波のせいで役に立たない。
 もっとも、ベンの大振りなパンチも、素早いボブキャッツを捉えることができない。

 互いに決め手を欠く攻防が続くうちに、敵方が撤退を開始した。
 いったん勝ち目なしと判断するや、連中の行動は実に鮮やかだった。
 いくさ場に未練を残さず、半数がベンを牽制しながら後退し、残りは背中を見せて四方に散っていく。
 続いて足止めしていた連中も、踵を返して迫りくる闇の中へと消えていった。

「ベン、追わなくていい。それよりシズカが心配だ」
 シズカに駆け寄ると、まだOSは稼働していた。
 だが、右肘のジョイントが外れ、回路が断線しているのか、肘より先が動かせない状態だった。
 ボブキャッツは、速射破壊銃が組み込まれた右手を一番危険な部位と認識したようだ。
 首を引っこ抜かれていたらお終いだった。

「直ぐに社務所に運んでください。兄なら、ここの神主ならどうにかできると思います」
 ミーナ嬢が本殿脇の建物を指さした。
 兄だって?
 神主が祈祷すりゃ、この酷い有様がどうにかなるってのか。
 とにかくこんなところにシズカを寝かせておくわけにはいかない。
「ベン、シズカを運んでくれ。ゆっくりとだぞ」
 ベンはできるだけ丁寧にシズカを抱え上げると、僕について社務所までやってきた。

 ミーナ嬢はガラガラと引き戸を開け、中へ向かって声を掛けた。
「お兄さまっ、大変です」
 うわ、こんな可愛い子に「お兄さま」なんて呼ばれる幸福者はどんな奴なんだ。
 白面の貴公子か、それとも苦み走ったサムライ風の壮士か。
 これでシズカをどうにかしてやれないのなら、ひょっとして殴ってしまうかも。
 どんないい男が出てくるのかと待っていたが、社務所の中からは物音ひとつしない。
「お兄さま、鬼一兄さま。早く出てらしてください」
 ミーナ嬢が今度は大声でがなり立てた。
 すると、ようやく社務所から反応があった。
ここまで見た
「るっせぇなあ。今いいとこなんだよ」
 下品な物言いとともに玄関に出てきたのは、思ってもいなかった汚らしい男だった。
 髪の毛は伸ばし放題で、頬から顎にかけてが中途半端な無精ひげで覆われている。
 着ている狩衣も、袖口や襟の辺りが黒ずんでいる。
 何より驚いたことに、手にはPSXのゲームコントローラーを握っていた。
「志保ちゃんに振られたら、テメェのせいだからなぁっ」
 この神主は、直ぐ横で局地戦レベルの戦闘が繰り広げられていた間、恋愛シミュレーション型のエロゲーに耽っていたのだ。
 確か社務所にも流れ弾が数発飛び込んでいたようだけど、この男にとってはお気に入りキャラに振られる方が大変なのだ。

「そんなことより、彼女を診てあげてください」
 ミーナ嬢が金切り声を上げた。
 彼女としても、この兄を僕の目に晒すことにかなりの抵抗があったことだろう。
 心中お察しする。
 鬼一と呼ばれた神主は半殺しにあったシズカを診て、ほう、というように眉を上げた。
「彼女は拝殿が焼かれるのを防いでくれたんです。なんとかしてあげてください」
 鬼一兄は腕組みして唸っていたが、やがて社務所へ顎をしゃくりながら言った。
「ったく、仕方ねぇな。中へ運びな」

 10畳ほどの社務所の中は、足の踏み場もない状態だった。
 万年床を中心に、薄い本やらゲームソフトやら、正体の分からない基盤などが散らかり放題になっている。
 無造作に転がっているPWSのフィギュアは、エイリアン側も含めてフルコンプ状態だ。
 実験小隊バージョンのファティマなんて、実物を見るのはこの僕も初めてだわ。
 ただ、メーカーものの高価なモニタと手組らしいマシンの筐体だけが、この場に似つかわしくない。
 モニタの画面は、見るも恥ずかしい「びーてぃんぐ・はぁと」の一場面だった。

 鬼一兄は万年床にシズカを横たえると、さっそく右肘の点検を開始した。
「兄は一応、帝都工科大を首席で卒業しているんです」
 ミーナ嬢は心配するなと僕にささやいた。
「大丈夫。ジョイントの部品は変形していない。強引に外されてるが、合金の粘りが安物とは違う」
 鬼一兄はメスを取り出すと、シズカの上腕の生体組織を切開した。
 そして装甲部のビスを次々に取り外し、内部構造を露出させる。
 メインジョイントを一度緩めて完全に外し、前腕と上腕を組み合わせてから締め付ける。

「ちょっと肘を動かしてみろや。そっと、小さくだぜ」
 シズカが指示に従うと、幾つも組み合わされたギアが作動音を立てて前後に回る。
 鬼一兄は空回りしているギアを確認し、ピンセットでつまんで噛み合わせを直す。
「こんなもんだな。後は断線のチェックだ」
 幾つものモーターから色とりどりのリード線が走っており、僕には何がなんだかサッパリ理解できない。
 それがこのオタク神主には手に取るように分かるらしい。
 テスターで通電不良の箇所を発見すると、リード線を替えたりバイパスを作ったりして、あっという間に修理は終了した。
 その上で生体組織を張り合わせ、目立たない肌色のラッピングで覆った。
 生体組織は一週間もあれば、傷跡も残さず密着するという。

「取り敢えずはこんなとこだろ。後は専門家に見てもらえ。加速管から弾を抜くのを忘れんなよ」
 鬼一兄はそういうと、手にしたプライヤーを工具箱に投げ捨て、さっそくPSXのリモコンに持ち替えた。
 いや、彼の言う専門家の中に、彼ほどの技術を持った人間が何人いるのだろう。
 感動すら覚える、鮮やかな手並みだった。

「兄はロボット工学の天才なんです。それが神職の家系に生まれたばっかりに……」
 ミーナ嬢が深いため息をついた。
「生まれの不幸を呪って、こんな自堕落な生活を送っているの」
「うるせぇ。黙らねぇとテメェをぶっ殺して、こっそりロボ妹と入れ替えるぞ」
 鬼一兄がモニタをにらんだまま悪態をついた。
 この人なら、ミーナ嬢と寸分変わらぬロボットを作るくらい造作もなさそうだ。
ここまで見た
「そんなことより小僧。お前、何を考えてんだ」
 感心していると怒りの矛先が僕に向いてきた。
「ラジエータが空の整備不良状態でバトルやらせるって、これはSMプレイか何かか?」
 この天才は肘のジョイントを見ただけで、シズカに何が起こったのか見抜いてしまったのだ。
「可哀想に、そのウーシュタイプはしばらくドック入りだな。関節部のあちこちが過負荷でガタガタだ。
あとOSのディレクトリも見てもらった方がいい。異常加熱により不具合が発生している可能性がある」
 僕はシズカにそこまで無理をさせてしまったのか。

「も、申し訳ありません……」
「俺に謝ってどうすんだよっ。自分のパートナーに謝れ、バカ」
「シズカなら構わない……クローのために壊れることこそ……シズカの本分……だから……」
「泣かせるねぇ。これじゃどっちがマスターなのか分かんねぇなあ」
 鬼一兄はケラケラ笑いながら、コマンド画面の選択肢を入力していく。
 くそ、いちいち腹が立つが、この人が言うことは的確だ。
 ただ――その志保の攻略法だけは不的確だ。
「志保を落としたいのなら、まず妹の美保と仲良くなって嫉妬心を煽らなきゃ……」
 笑いに合わせて小刻みに上下していた鬼一兄の肩が、その瞬間ピタリと止まった。


 それからが大変だった。
 僕は市販のゲーム雑誌の情報からネットで仕入れた裏技まで、「びーはぁ」について知ってる限りの攻略法を喋らされた。
 矢継ぎ早の質問に答えるのもきつかったが、本当に辛かったのは僕を見るミーナ嬢の目が徐々に白くなっていくことだった。
 完全に兄と同類、不治のゲームオタクであると思われてしまったのに違いない。
 しかもロボフェチ、SMマニアの三重苦は致命的だわ。
 夜も更け、社務所をお暇する頃には、僕はすっかり鬼一兄に気に入られてしまっていた。
「うわはははっ、また遊びに来いや」
 鬼一兄の馬鹿笑いを背に、ミーナ嬢に鳥居のところまで送ってもらう。
「今日は本当にありがとうございました。兄は別として、また遊びにいらしてください」
 機会があればまた来たいが、あまり深入りすることはできまい。
 僕はこっちに降りかかってくる火の粉を振り払うのに忙しくなりそうだから。



「ホントにゴメンな。無理させてしまって」
 僕は走り始めたベンの中で、改めてシズカに謝罪した。
「冷却水さえ満タンなら、あんな連中は速射破壊銃で撃墜できていたのに……」
 最後の最後で照準システムが落ちたのは、運が悪かったとしか言いようがない。
「クローのせいじゃ……ない……シズカが……もう……完全に……型落ちだから……」
 何を可愛いこと言ってくれるのかと振り返ったら、シズカは真顔で落ち込んでいた。

「シズカの火器管制システムでは……50の目標を同時に自動追尾できるけど……同時照準は10機まで……」
 CPUのタイムシェアリング機能を最大にしても、それが限界だという。
 だから、ボブキャッツの最後の1体がロックオンできず、OSに無理を掛けたあげくフリーズしたとのことであった。
 シズカの火器管制システムは、ロックオンした標的にのみ射撃の許可を出す。
 許可の下りぬまま無理に発砲しようとしたため不正な処理と認識され、OSが強制終了したのだ。
「10体を撃破した後、残りの1体に照準し直せばよかったんじゃないのか」
 それを試みたが敵の接近速度が速すぎたため、処理が間に合わないとの結論が出たそうな。

「シズカでは……この先クローを守れない……それが悲しい……」
 なんということか、シズカは完全にダウナーモードに入っていた。
 そんなに落ち込まなくてもいい。
 たとえ新型が配属されても、僕はシズカを手放したりしないから。
 警視庁がシズカを廃棄処分しようとしたその時には――。
 僕の持てる力の全てを使って君を守ると誓うよ。
 だから、これからもずっと2人で頑張っていこう。

 僕は心の中で固くそう誓った。
ここまで見た
  • 845
  •  
  • 2015/06/07(日) 20:45:46.31
投下終了です
ここまで見た
  • 846
  •  
  • 2015/06/07(日) 22:03:44.63
>>845
GJ!
ここまで見た
  • 847
  •  
  • 2015/06/07(日) 22:56:24.32
メカバレも勢いのある放にょ…排水シーンも素晴らしい
ありがたいありがたい
ここまで見た
  • 848
  •  
  • 2015/06/08(月) 02:23:42.96
あれま、敵が10体を越えていたからフリーズしたのか(滝汗
ボブキャッツが11体で来たのも、ウーシュ0033の仕様を知り尽くして弱点を狙ったのかしら(滝汗

吸熱剤入りの専用冷却液、人間が飲んだら毒性ありそうだけど、シズカさんがプシャーした液体なら飲みたいですね^^
ここまで見た
  • 849
  •  
  • 2015/06/08(月) 05:49:29.94
最高ですわ
ここまで見た
  • 850
  •  
  • 2015/06/08(月) 08:19:14.22
うお、続きキテター!
ありがとうございます!
ここまで見た
  • 851
  •  
  • 2015/06/08(月) 23:15:17.67
さりげにフルコンプされてるPWSのフィギュアに糞ワロタ
ここまで見た
  • 852
  •  
  • 2015/06/08(月) 23:52:29.53
しかし、無敵のシズカたんも、もう型落ちの旧型になっちゃったのですねぇ・・・orz
ここまで見た
  • 853
  •  
  • 2015/08/02(日) 13:58:46.75
8月、専用冷却液補充保守
ここまで見た
  • 854
  •  
  • 2015/08/05(水) 21:34:20.48
「ロボットとの性行為は50年以内に当たり前になる」と英研究者 例として日本の熱海のカレシを挙げる - ITmedia ニュース
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1508/05/news107.html

だそうです。50年後には当たり前なのね。俺たちは、生まれるのが50年速すぎたんだ。
やっぱり、このスレの人は、ロボットと結婚するの?
ここまで見た
  • 855
  •  
  • 2015/09/04(金) 15:32:58.83
9月、ウーシュ社で火器管制システムアップグレード保守
ここまで見た
  • 856
  •  
  • 2015/09/20(日) 04:07:21.22
ついに人工知能搭載の「セックスドール」登場、さらにVRヘッドセットで理想の相手に触れる機能も - GIGAZINE
http://gigazine.net/news/20150617-sex-doll-talk/

しゅごい、これ、顔の皮膚を外した所の眼球とかメカが見えるのが、メカバレっぽくていいね

年内にも発売されるセックスロボット、英研究者が禁止を呼びかけ | ビジネス | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/09/post-3929_1.php

ニューハーフみたいなごつい顔とコレジャナイ感
オリエント工業とかハルミデザインのヘッドもつけられればいいのだけど
ここまで見た
  • 857
  •  
  • 2015/09/20(日) 15:24:34.42
>>856
このスレの人なら、むしろ皮膚をかぶせないほうが萌えるかも?
感電とか機構部に巻き込まれ足りとか、さまざまな液体がかかることを考えるとカバーなしは推奨されないかもしれないが
ここまで見た
  • 858
  •  
  • 2015/09/21(月) 00:30:19.16
アンドロ娘にとって人工皮膚は服のようなものか
人間で言う裸は平気なのに、ちょっとでも内部構造が見えると猛烈に恥ずかしがる
いいと思います!
ここまで見た
  • 859
  •  
  • 2015/09/21(月) 11:23:41.53
まだ人がいたのか
ここまで見た
  • 860
  •  
  • 2015/09/21(月) 16:44:34.81
たしかに、メカばれは萌えるな
そしてロボット禁止を呼びかけた英研究者とやらはくたばれ
ここまで見た
  • 861
  •  
  • 2015/09/21(月) 18:59:21.03
そらフェミニストはうるさいに決まってるわ
ここまで見た
  • 862
  •  
  • 2015/09/22(火) 16:02:49.55
>>861
なるほど。浮気だなんだと監視したり、給料を全部がめてわずかな小遣いしかくれない糞女よりも
老けないし、うるさいことも言ってこないし、意味もなく機嫌悪くなったりもしない美少女アンドロイドがいいに決まってるよな。
フェミBBAどもは、自分のくもの巣の張りかかった汚い穴の価値が下がるから、文句をいってくるんだな。
ここまで見た
  • 863
  •  
  • 2015/09/23(水) 23:07:37.66
>>854
シミュレーターで、前からできていた。

アニメキャラと性行為ができるシミュレータを日本人が開発
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1384561777/
ここまで見た
  • 864
  •  
  • 2015/09/25(金) 00:01:46.51
>>863
シミュレーターじゃだめだ。現実にあるわけじゃないからな。
むしろ、これなんかどうだ?
中国企業が自動射精マシーンを新開発 / 立ったまま勃たせて強制射精
http://searchina.ne.jp/bz/cs/disp.cgi?y=2011&d=0501&f=national_0501_137.shtml

まあ、中国製だから、中にいれたチソチソが千切れたり、漏電して死んだりとかするかもしれないがな^^
ここまで見た
  • 865
  •  
  • 2015/09/25(金) 01:57:31.14
外観をオリエント工業に受託しよう
被験者との応対も女性ボイスでな
「次回検診は○月○日です。オナ禁を心がけてくださいね」とか
これで日本は長寿になる
ここまで見た
 僕は今、装備課のラボの前に立ち、左手首の携帯端末を弄っているところだ。
 ウーシュ0033の火器管制システムについて、ネットで検索しているのだ。
「火器管制システムは同時に25の目標を自動追尾し、そのうちの4目標にロックオンしてレールガンを撃ち込める…」
 シズカは50の目標を自動追尾し、同時に10の目標にロックオンが可能と言っていた。
 調べてみると、ソフトとハードの機能を目いっぱい盛れば、最大でその数字まで性能向上が可能となっていた。

 ウーシュ0033に搭載されたレールガンは4丁だから、本来ならロックオンは同時に4目標で充分である。
 ところが、シズカはCPUのタイムシェアリングを利用したマルチタスクで、照準ソフトを並列稼働させている。
 その上、左腕のプラズマキャノン砲の照準システムを流用し、更に2目標に対しての追加ロックオンを可能にしているのだ。
 これにより、最初の4目標の他に、あと6つの目標に対して先行照準が可能になる。
 だから、4つの標的を撃ち抜いた後に、改めて別目標をロックオンし直すより、遙かに短時間で残敵を掃討できる。

 この切れ目なく発砲しながら、万が一にも誤射を許さない、高度な射撃システムが徒になったのだった。
 多重照準は、シズカの演算処理回路に相当な負担を強いるのだろう。
 10体のボブキャッツにロックオンしながら、残る1体に照準ができず、無理した挙げ句にシステムが落ちたのだ。
 連中が通常タイプのマシン兵器だったなら、結果は違ったものになっていただろう。
 だが、新型アクセラレーターを搭載した最新機種に対しては、アレがシズカの限界だったのである。

 安全装置としても機能しているこの管制システムをどうにかできないものか。
 いろいろ調べてみたが、どれも違法改造になってしまう。
 ロボットであってもシズカは女刑事だから、法に触れるようなことはさせられない。
 といって、ボブキャッツに対して復讐の機会を与えてやりたい気持ちもある。
 気長に調べればヒントを得られるかもしれないが、今はダメだ。
 間もなく、シズカの点検が終わるころだから。

 と思っているうちにラボの扉が開き、一目でメカヲタ――いや、技術バカと分かる技官が出てきた。
 彼は警視庁の人間だが警察官ではなく、いわゆる一般職員という存在だ。
 司法警察権をもって捜査に当たることはなく、技術を活かして警察活動を支えるスペシャリストである。
 その彼に不具合を起こしたシズカの点検をお願いしていたのだ。
「どうでしたか、シズカは? 直ぐに連れて帰れますか?」
 僕は技官に詰め寄った。
「いやあ、無理ですね。ちっちゃなモーターがあちこちで焼けているし、OSにも不具合が生じてる」
 技官は首を振り振り言った。
「急いで作業しても……まぁ、一週間はかかりそうですね」
 一週間も職場復帰できないだと。
 今さらながらにバカなことをしてしまったと後悔する。
「今日から泊まりこみで作業に入りますよ」
 技術バカはむしろ嬉しそうに張り切っている。
 名機の誉れ高いウーシュ0033を弄れるのが、楽しくて仕方がないようだ。
 嫌々作業されるよりは好ましいのだが、他の男にシズカを触られるのは複雑な気分だ。
「会ってもいいですか?」
 僕は断りを入れてから、ラボの中に入った。

 シズカはいつもの仏頂面で作業台の上に横たわっていた。
 関節部は生体皮膜や装甲を取り除かれ、メカ部が露出している。
 両耳の端子からはケーブルが伸び、枕元のデスクトップに接続されている。
「シズカ、大丈夫か?」
 僕はおそるおそる話し掛けてみた。
 シズカは首から下が動かせないのか、目だけで僕の動きを追う。
「問題ない……それよりクローの方が……心配……」
 これから一週間、僕はシズカの護衛なしで過ごさなければならない。
 よりによって、頭上に暗雲が立ち込めているこのご時世に。
 シュガー姉妹のどちらかに、臨時のヘルプを頼んだ方がいいかもしれないな。
「シズカが心配してるのは……そっち……」
 彼女は僕が他の女に手を出さないかを心配していたのだ。
 思わず苦笑いしてしまったが、身動きできないシズカにとっては切実な問題なんだろう。
「僕がそんなにモテるわけないだろ。心配するなって」
 僕は真顔になってささやいた。
「分かってる……」
 力無く笑うシズカにキスをして、僕はラボを後にした。
ここまで見た
さて、特命監察に出向くには、まだ時間的余裕がある。
 どこかにしけ込んで、ファムロイヤル警視を納得させられる言い訳を考えるとするか。
 やはりいつもの喫茶室がいいと考え、僕はエレベータホールへと向かった。
 17階でエレベータを降り、喫茶室へ向かう途中で僕は背後から呼び止められた。
「クロー様……」
 聞き慣れぬ丁寧な口調に、思わず背筋に寒気が走る。
 振り返ると、見知らぬ女性が立っていた。

 年齢は二十歳前後で、仕立てのいいミニスカスーツを着ている。
 暗褐色の髪は長いカーリーヘアで、そばかすが浮いた童顔に柔らかい笑みをたたえていた。
 こんな無粋なスーツよりも、素朴なエプロンドレスの方が似合いそうな美少女だ。
 冒険RPGの宿屋で働いている、明るく純朴な村娘を連想させる。
 しかし、申し訳ないことに、どこの誰だかまったく分からない。
 これだけ可愛らしい女の子なら、忘れるわけがないんだが。

 戸惑っていると、黒髪の美少女は「あっ、そうか」という風に手を打った。
 そして数歩の距離を後ずさると、8時20分の形に両手を開く。
 続いて彼女が見せた行動が、僕に小さな悲鳴を上げさせた。
 彼女はどこからともなく短剣を取り出すと、それを使ってジャグリングを始めたのだ。
 短剣の数は次々に増え、今や剣の舞を演じている。
「もしかして……ジィナさん……?」
 伊豆の無人島でシュガー姉妹に襲われたとき、この技を使うピエロに助けてもらったことがある。
 ピエロに扮していたのは、ジィナ・アノワールというティラーノ親衛隊員であった。
 僕が問いかけると同時にジャグリングが終了した。
 宙を舞っていた短剣が忽然と消え去り、ジィナ嬢は芝居がかった所作で一礼した。
「お久しぶりです、クロー様。この前はしてやられました。さすがはお嬢様が見込んだ殿方だけのことはあります」
 ジィナ嬢は人好きのする笑顔で何度も頷いた。
 こんな素敵な笑顔を見せる女の子が、シズカと同じマシン兵器だなんて信じられない。

 先月発生した都知事暗殺事件に際し、僕は彼女に先んじてホルジオーネの秘密基地を粉砕した。
 どうあってもティラーノを「帝都の恩人」にするわけにはいかなかったからだ。
 しかし、僕の奮闘は徒労に終わったようだ。
 手順は違えど、連中はこうして都政の中枢に食い込んでしまっている。
 結局、僕はティラーノの政治的侵攻を1ヶ月遅らせることしかできなかったのだ。

 で、ジィナ嬢はどうしてこんなところにいるのだろう。
「本社の指示で、ティモシー様のところに派遣されているんです」
 彼女の役割は、人事一課長ティム・タイラーのボディガードってわけか。
 彼女みたく凄腕のマシン兵器に守られているんじゃ、おいそれと手を出せないな。
 なにせ、あの強烈なシュガー姉妹が二人掛かりで、手も足も出なかった相手なんだから。
「そうだわ、課長に紹介しますから、一度会っていただけませんか?」
 なんで僕が人事一課長、すなわちミーナ嬢の敵に会わなきゃならないんだ。

「さあ、さあ」
 ジィナ嬢は僕の腕を絡め取り、アベックスタイルで強引に歩きだした。
 なんか可愛い彼女に、無理やりウィンドウショッピングにつきあわされているような錯覚を起こす。
 ピッタリ身を寄せるからいい匂いが鼻をくすぐるし、肘先に当たるオッパイの感触がなんとも心地よい。
 ニタニタしているうちに、人事一課の執務室まで連れ込まれてしまった。
 しまったと思ったときはもう遅かった。
 間抜けなお上りさんみたく、まんまとデート商法に引っ掛かってしまったではないか。

「やあ、よく来てくれたねぇ」
 応接セットで出迎えてくれたのは、人事一課長のティム・タイラーであった。
 スラリとした長身をブランドもののスーツに包み、ハンサムな顔ににこやかな笑みをたたえている。
 なんか思っていたのとイメージが違い、僕は面食らってしまう。
 勧められるままにソファーに腰掛けると、ジィナ嬢がサッと紅茶のカップを置いた。
 取っ手の方向やスプーンの置き位置は正統な英国スタイルだ。
ここまで見た
「君のことはコリーン殿からよく聞いているよ」
 人事一課長は紅茶を勧めながら用件を切り出した。
「私がこの国に出向くと知るや、君を頼るよう助言をくれてね。クロー君ならきっと期待を裏切らないって」
「お嬢様って、クロー様にはご一族同然の絶大な信頼を寄せてらっしゃいますもの」
 ジィナ嬢がニコニコ顔で僕を持ち上げる。
「あのコリーン殿がそこまで買っているんじゃ、私も期待しないわけにはいかないじゃないか」
 うわ、ひょっとして追い込まれつつある?
 この状況下じゃ、何を頼まれても拒否できないじゃないか。

 しかし、どうも調子が狂う。
 この人が、本当に昨夜マフィアを使って堀川神社を襲わせた張本人なのか。
 全部演技なのかもしれないが、想像してたのと雰囲気が違いすぎる。
 キーヨ氏もそうだったけど、ティラーノの上層部はみんな振る舞いがスマートだ。
 あの勝ち気で我が儘なコリーン嬢だって、僕が中華マフィアと揉めたときには、正義の名の下に体を張って加勢してくれた。
 万事に無気力なモトリオや粗野で乱暴なナショーカたち、ミナモンテスの男とは比較にならない。

「僕に何を求めてらっしゃるのでしょうか。あまり大した男じゃないんですが」
 僕はおそるおそる人事一課長に尋ねてみた。
「何を謙遜しておるのかね、帝都の若き英雄ともあろう者が」
 その通り名がここで出るとは思わなかった。
「なんでも、戦闘サイボーグ10体を相手に1人で立ち向かい、最後の1体と壮絶な相打ちになったんだって?」
 ティム・タイラーが身を揺すって笑う。
「何をしてくれというのではないが、君には是非とも我が陣営に加わってもらいたい。英雄がいるだけで味方は心強いものだ」
 随分と買い被られたものだと恥ずかしくなる。
「君としてもコリーン殿の期待を裏切り、彼女を失望させるのも不本意だろ?」
「いいえ、お嬢様はご自分をうち負かしたクロー様にぞっこんですもの。その程度であの方の気持ちが揺らいだりはしませんわ」
 ジィナ嬢がクスクスと笑う。

 この人たちは、どうあっても僕を味方に付けたいようだ。
 と言うか、これ以上はミーナ嬢に近づくなって警告なんだろう。
 あの可憐で凛々しい少女剣士を敵に回すのは辛いし、なんと言ってもティラーノに与するには心理的な抵抗がある。
 形の上とは言え、ティラーノは両親や一族同胞の仇なのだ。
「まあ、なんにせよだ」
 ティム・タイラーの口調が少し改まった。
「君にはコリーン殿を悲しませるような真似だけはしてもらいたくないね。これは彼女の叔父としての願いだ」

 その忠告というか警告を最後に、人事一課長との面談は終了した。
 如何に当主の愛娘が親しくしている友人であろうが、邪魔な存在は排除するって脅しなんだろう。
 コリーン嬢に絶対の忠誠を誓うジィナ嬢だって同じだ。
 お嬢様の将来にとって有害と判断すれば、なんの躊躇いもなく僕を殺しにかかるだろう。
 たとえその結果、永遠にお嬢様の不興を買うことになるとしてもだ。
 よりによってシズカがいない時期に、とんだ厄介ごとが転がり込んできたもんだ。
 これは嵐が通り過ぎるまで、休職していた方がいいのかもしれない。


 おそるおそる人事第一課の執務室を出た僕に、更なる厄災が待ち受けていた。
 廊下に出た途端、こちらへ向かってくる一団を目にしたのだ。
 全員お揃いの赤レオタを着た少女たちが、歩調を揃えて近付いてくる。
 ティム・タイラー課長の私設アンドロイド部隊、ボブキャッツだ。
 何がどうなった結果なのか、半殺し状態の制服警察官を引きずっている。
「ひでぇ……」
「なんでも、人事一課の遣り口に不平を漏らしてたってことだぜ」
「おっと……くわばらくわばら……」
 事情通らしい私服の刑事たちが、ひそひそと話しているのが聞こえてきた。

 外回りの僕は知らなかったが、庁内には少し前からこのようなシステムができあがっていたらしい。
 人事一課長、すなわちティラーノの方針に従わない者は、反乱分子として厳しく詮議されるというのだ。
 庁内を巡回し、不満分子を狩り出すのが彼女らボブキャッツだ。
 下手に抵抗すれば、あの制服警察官のような末路が待っている。
 あんなに期待していた第二期ロボコップ計画が、まさかこのような形で実施されるとは。
ここまで見た
 おわっと、これはまずい。
 僕は顔を覚えられているから、連中に見つかれば問答無用でしょっぴかれる。
 アシモフ回路が搭載されていない彼女らは、相手が生身の人間であっても容赦は一切しないのだ。
 僕は身を翻すと、ボブキャッツと反対方向へ全力疾走を開始した。
 かくなる上は特命監察に駆け込んで、ファムロイヤル監察官の庇護下に入るしかない。
 あんな高慢ちきな女に屈するのは面白くないが、命あってこその反骨心だ。
 ここは一時の恥を忍んで、特命監察官様におすがりするしかない。

 僕は監察官室のドアを体当たりで開けると、驚いている室員を無視して、特命監察のオフィスに飛び込んだ。
 そのままの勢いで床に倒れ込み、樹脂製のタイルに額を押し当てる。
「特機隊、クロード・フジワラ巡査部長。フェデリア様の御為に、全身全霊を捧げる覚悟でまかり越しましたっ」
 僕は恥も外聞もなく、屈服と忠誠を同時に表明するときに用いるトラディショナルなスタイル――土下座を敢行した。
 そのままの姿勢を保持し、お声が掛かるのをひたすら待つ。
 しかし、いつまで経っても「面を上げい」の号令が発せられない。
 不審に思って顔を上げると、そこにファムロイヤル監察官はいなかった。
 代わりに監察官の秘書、ココ主任が冷たい目を僕に向けていた。

「クロード主任、特命監察官は体調不良のため、今週一杯はお休みです。取り敢えず土下座は結構ですから」
 昨日会ったのとは別人のような冷酷さで、ココ主任が僕を一瞥する。
 僕は弱々しく立ち上がり、卑屈な笑顔で気まずさを取り繕う。
 それを待ってココ主任が口を開いた。
「で、我々に力を貸して下さるというのは本当なのですか? 特命監察官のため、全身全霊を捧げるお覚悟とか」
 むぅ、これは一生の不覚だ。
 僕の恥ずかしい台詞が、一言一句漏らさずに記憶されている。

「ははぁっ、微力ではございますが、全力を尽くす所存なれば」
 僕はここが我慢のしどころと、再び頭を下げた。
 とにかくシズカがいない今、監察の傘に入らないことには身の安全は保証されない。
 ココ主任は「ふぅ〜ん」という風に、何度か小さく頷いた。
 勿体つけてないで、さっさと了承してくれ。
 と思っていたら、妖精少女の愛らしい唇の間からとんでもない言葉が漏れ出した。
「主任のお志は了解しました。早速、来週の連絡会で審議させていただきます」

 なんだって。
 この僕に週明けまで、ボブキャッツの恐怖に怯えて過ごせというのか。
 こっちは監察官指示で庁舎内に留め置きの身だから、自由に外出することもできないんだぞ。
 ここで引き下がっては命に関わる。
「では、取り敢えず見習いとして、今からココさまの下働きを。肩揉みでも、乳揉みでも、何なりとお申し付け下さいませ」
 うわっ、慣れないお追従をやろうとして、反射的にあのモトリオ・ミナモンテスの唾棄すべき台詞を真似てしまった。

 ところが、これが思いも寄らぬ効果を発揮した。
 笑いのツボに入ったのか、素っ気なかったココ主任がたまらず吹き出しかけたのだ。
 一気に詰め寄るチャンスと思ったのも束の間、ココ主任は失態を取り繕うとして、更に頑なな態度に出た。
「私には人事を決定する権限はありませんの。すべては来週、監察官が復帰なさってからの話です」
 ココ主任は怒ったように僕を睨み付ける。
 いったい何が気に入らないのか心当たりはないが、たった一日で僕は彼女に嫌われてしまったようだ。
 とにかく、この妖精少女から鉄仮面を引き剥がさなきゃ話が進展しない。

「だいたい監察官はどうして休んでらっしゃるんです。ご病気って……まさか、今流行りの中二病じゃないでしょうね」
 僕は心配顔を作って、ことさら不安そうに尋ねる。
 またココ主任のツボを突いたのか、今度は背けた顔の下半分を右手で覆うと、ブッと音を立てて吹いた。
「い、いい加減にしてくださいっ。特命監察をバカにすると承知しませんよっ」
 ココ主任は激怒してみせるが、再び顔を背けて盛大に吹き出す。
 あの糞真面目な上司が邪気眼持ちになり、「クッ…鎮まれ…我が腕よ…」とか言ってる姿を想像してしまったのだろう。
「どうかなさいましたか? さっきからご様子がおかしいようですが」
「あなたが真剣な顔をしておかしなこと言うからですっ。あの方は内分泌系の持病があって、月に一週間はお休みになるんです」
 ココ主任は遂に半泣きになって訴えかけてきた。
「すぐに出ていってください」
ここまで見た
 やれやれ、取りつく島もないとはこのことだ。
 笑わせて冷酷な仮面を外させようとしたのが裏目に出てしまった。
 しかし、これは相当にヤバい状況だ。
 シズカはいない、特命監察の傘は無いでは、危なっかしくて庁舎内を歩くこともできない。
 こうなったら、終業時間まで屋上のヘリポートにでも身を隠しておくか。
 どうせ今日は取り調べもないようだし。


 エレベータで最上階まで上がり、階段を使ってエアポートと展望台のある屋上へと出る。
 まだ課業始めから時間が経っていないため、展望台には人気がなかった。
 これでようやく一息つけそうだ。
 まさか自分の職場でリアル鬼ごっこさせられる羽目になるとは思ってもいなかった。
 早いとこボブキャッツの巡回パターンを見極めないと、体力的にもたなくなる。
 作戦を練ろうと、僕がベンチに腰を下ろしかけたときであった。

「よお、クロォ」
 いきなり背後から呼びかけられ、僕は反射的に前方回転受け身をとっていた。
 回転の余勢を駆って立ち上がりながら、右手をジャケットの左脇に差し込む。
 が、そこに9ミリ拳銃のホルスターはなかった。
 同時に、せっかくバックを取りながら、わざわざ声を掛けてくる敵などいないと気付く。
 相手を刺激しないようにゆっくり振り返ると、ベンチの後ろ――機械室へと続く階段に一人の婦警が座っていた。

 一応、女性警察官の制服だが、ノーネクタイで胸元を大きくはだけている。
 スカート丈は、ありえないような超ミニだ。
 だらしなくウンコ座りしているから、右の内股に鮮やかなバラ一輪のタトゥーがパンティと共に丸見えになっている。
 魅力的な下半身をタップリ堪能した後、ゆっくりと視線を上げる。
 逆立てられた赤髪はボサボサだが、シャープな印象を与える美人顔だ。
 それがどぎついメイクのため、非常に残念なことになっている。
 これだけ綺麗なのだから、普通にしていたら幾らでもいい男が寄ってくるだろうに。
 真っ赤に塗ったくった唇の間には、火のついたタバコがくわえられていた。
 足元にパンの袋や牛乳のパックが散らかっているところを見ると、さしずめ朝食後の一服中というところか。
「特機隊のクロォだろ、お前。帝都の若き英雄の噂はオレも聞いてるぜ」
 女はもう一度僕の名を呼ぶと、意味もなくニヤリと笑った。
 凄みがあるが、どこか頼りがいを感じさせる笑顔だ。
 誰かと問うまでもなく、思い当たる名前が脳裏にひらめいた。

 ロージー・スルーガー、人呼んでスケバン・ロージー。
 警視庁のワルを束ねる女番長として、全ての不良警察官の上に君臨している女傑だ。
 業務上横領から収賄まで、殺人以外の犯罪は一通りこなしているという。
 それでも停職以上の罪には問われずにいるのは、上層部の弱みをしっかり握っているからだそうだ。
 警視庁における彼女の所属は、総務部逓送係だと聞いている。

 逓送係というのは警察内部の郵便屋さんで、本庁の各課や警察署を回って内部文書を集配するのが仕事だ。
 危険やノルマとは無縁の、怠惰な職員にとって憧れのポジションである。
 普通なら心身に故障がある者か、術科で功労のあった特練員が引退後に就くことになる。
 健康で働き盛りのロージーがそのポストを手に入れるのに、特殊な手段を用いたであろうことは想像に難くない。
 だが、彼女はその楽な逓送係の仕事さえサボりまくりらしい。
 職場に出てくるのは気が向いたときだけで、月に5日も出勤すればいい方だという。
 人事一課も術科特練を目の敵にするのじゃなく、こういう悪をリストラすればいいのだ。
 そんなロージーだから、超有名人なのに実際に会った人はほとんどおらず、僕も噂でしか彼女のことを知らない。
 都市伝説じみた、本来なら存在自体が許されないような警察官なのである。

「なんでぇ、新種のUMAでも目撃したようなツラしやがって」
 ロージーはケケケと笑うと、唇をとがらせて紫煙を吐いた。
「しかし、なかなかいい動きだった。ベンチに座るとこまでは隙だらけだったのに、そこからの動きはまるで別人だったな」
 ロージーはその時だけ真顔になっていた。
「正直、このオレもゾクッと来たぜ。たった1人で傭兵サイボーグ小隊の15人を倒したって噂もフカシじゃないようだ」
 誰に聞いたんだ、そんなホラ話。
 つか、話が際限なく大きくなっているみたいなんだけど。
ここまで見た
 しかし、言われて気付いたことだが、先ほど背後に人の気配を感じてからの一連の動きはプロじみていた。
 大きな声では言えないが、僕は特機隊の新隊員訓練ではビリに近い成績だった。
 格闘技や射撃は絶望的であり、CQBの突入訓練ではよく教官に頭を抱えさせたものだった。
 僕が「帝都の英雄」という、一種の特待生扱いを受けてなかったら、きっと退校処分を宣告されていたに違いない。
 今のような動きができたのは、ようやく身体が特殊機動に馴染んできたからなのだろうか。
 それとも、移植された神経回路に頼りきった、後天的な運動機能が開花したのだろうか。
 なにか、自分がどんどん人間じゃなくなって行くような、不安じみた感情が湧いてくる。

「あの特命監察の石頭が目を付けるわけだ。テメェ、クソ眼鏡に言い寄られてるそうじゃねぇか?」
 ロージーは台詞と共に短くなったタバコを吐き捨てた。
 どうにも聞き捨てならない話だ。
「言い寄られてるなんて、番長の誤解です。確かに監察の調査に協力しろって、頼まれはしましたけど」
「あの女が他人を頼るなんてのはよっぽどのことだ。相当に気に入られているんだな」
 ロージーは値踏みするように僕をねめ回す。
 警視庁きっての悪である彼女にしてみれば、特命監察は不倶戴天の敵と言っていい。
 きっと何度も直接の取り調べを受けているだろうから、ファムロイヤル監察官のことは知り尽くしているのだ。

「いや、気に入られているのは剣術特練の鶴見巡査長でしょう。僕に手を貸せってのも彼女を人事一課長から守るためで……」
「こともあろうに、テメェはその人事一課とも懇ろみたいじゃねぇか」
 まずい、ジィナ嬢と話しているところを目撃されたのか。
 あんなシーンを見られれば、僕たちが相当深い関係にあると勘ぐられてしまう。
「裏切られたと知ったら、ミーナは泣くだろうなあ。いや、ぶち切れて暴れちまうかもな」
 ロージーはニヤニヤ笑って他人の不幸を楽しんでいる。

「いやあ、アレは巧みなデート商法というか、僕が浅はかだったというか」
 ミーナ嬢はともかく、シズカには知られたくない話である。
 僕が生身の女と話しているだけで、グングン電圧が上がる彼女のことだ。
 同じマシン兵器のジィナ嬢とイチャついていたことが知れると――その先は恐ろしくて想像もしたくない。

「義侠心溢れる番長様のことですから、告げ口などなさらないと信じておりますが……」
 僕は揉み手をしながら、美人の不良婦警に媚びへつらった。
「調子のいいヤロォだな。まあいい」
 ロージーは新しいタバコをくわえると、無骨な銀のライターで火を付けた。
「せいぜい楽しませてくれや。ついでに監察と人事が共倒れになってくれりゃ、このオレも大助かりってもんだ」
 この綺麗だがガサツでずる賢い女は、僕に特命監察と人事一課の間を上手く立ち回らせて、漁夫の利を得ようって魂胆なのだ。
「すべてが終わって、テメェがまだ生き残っていたなら……そんときゃ、オレの子分にしてやるよ」
 そう言うと、ロージーは立ち上がって展望台から出ていった。
 勿論、牛乳の空パックやパンの包みは散らかしたままだった。

 こんなデリカシーもモラルも欠如した女は、幾ら美人であっても御免こうむる。
 まあ、どうしてもって泣いて頼まれたら、一度くらいはお情けで寝てあげるかもしれないけど。
 しかし、どうして僕の周りにいる女は、揃いも揃って暴力的なんだろう。
 問答無用のシズカを筆頭に、我を忘れた時のサトコや、正義の名の下に嬉々として二丁拳銃を撃ちまくるコリーン嬢とか。
 あのミーナ嬢が如何にまともなことか。
 そうだ、午後から北の丸公園の第一機動隊へ行ってみよう。
 執務時間中は警察施設内にいるようにとの指示だけど、本庁舎に限るとは言われていない。
 機動隊も警察施設なんだから、職務放棄の誹りは受けまい。



 僕は昼休みの雑踏に紛れて地下駐車場へ降り、ベンKCに乗って本庁舎を出た。
 監察官指示がどうであれ、昼休みに外出するのは当然の権利だ。
 課業時間になる13時までに警察施設に入っていれば、何の問題もないのだ。
 幸い、第一機動隊のある北の丸公園までは5分もかからない。
 途中のドライブスルーで昼食をとり、昼休み終了の直前に第一機動隊に滑り込む。
 正門で特機隊のバッジを見せると、そのまま駐車場まで通してくれた。
 特機隊の隊員はマル機あがりの者が多いし、突入訓練ではここの模擬ハウスを借りることになっている。
 僕が立ち寄った理由も、知り合いに会うためか、訓練の打ち合わせに来たとでも思われたんだろう。
ここまで見た
 操練場ではフル装備の機動隊員による駆け足訓練が行われていた。
 クソ重い防護衣や大盾をものともしない若いパワーは頼もしい限りだ。
 この人たちがティム・タイラーに与せず、本当に良かったと思う。
 まあ、実際にやり合えば、ジィナ嬢一人にグチャグチャにされちゃうんだろうけど。
 若い隊員の教練を横目に、剣術特練がいる武術館を目指す。
 ミーナ嬢たち特練員は武術小隊に属しており、課業時間中はずっと武術の訓練だろうから。

 目指す武術館に辿り着き、靴を脱いで館内に上がり込む。
 檜の香りに混じって、シズカが羨ましがりそうな汗の匂いがたちこめている。
「え〜っと、こんちわっ」
 剣道場まで案内を乞おうと声を出してみるが、あいにく受付には誰もいない。
 仕方なく、それっぽい扉を開けてみる。
 すると、そこは道場は道場でも、剣術ではなく柔術の道場だったのだ。
 壁に掛けられた大きな額には、墨で書かれた「柔」の一文字が――しかも、ここは女子の道場である。

 なぜ分かるかって、そりゃ稽古着に着替えるのにブラジャーを外してハンガーに掛けておく男子はおるまい。
 そう、僕は間違って女子柔術の控え室に入り込んでしまったのだ。
 まずい、見つかる前においとましなくちゃ、と思ったときは既に手遅れだった。
「キャアァァァーッ、下着泥棒ぉっ」
 耳を聾する女の悲鳴がとどろき渡った。


 無理やり道場に引きずり込まれた僕は、言い訳の一つもできないまま青畳の上に転がされた。
 周囲をぐるりと取り囲まれ、退路は完全に断たれている。
 柔術用ユニタードを着た若い婦警がざっと30人ほど。
 全員が腕組みして、冷たい目で僕を見下ろしている。
 どっちを見ても引き締まった肉体を持つ、凛々しいお姉さんばかりである。
 好きな人にはたまらないんだろうけど、こういうのは僕の守備範囲ではない。
「よりによって、あたしら柔特の控え室に泥棒に入るとは」
「可愛い顔に似合わず、いい度胸してるねぇ」
 うわ、輪姦される女の子の恐怖心が、少しだけ理解できたような気がする。
「いえ、決して色情盗の目的で入った訳じゃ……」
 僕はたくましい柔術特練の着衣を狙うようなマニアックな人間ではない。

「どうせ下着を盗むんだったら、駅伝特練とかの方が……」
「なんだと、コラァ」
 余計なことを言ったため、僕は襟元を締め上げられる。
「あたしら柔特は、武道小隊の中でも最も由緒正しい部隊なんだよっ」
「チャラチャラした駅特なんかと一緒にすんじゃねぇっ」
「特命監察の捕り物では、必ずウチらが応援に呼ばれるほど信頼されてんだ。知ってろや」
 特練員たちは真っ赤になって僕を締め上げる。
「い、いやあ、実は僕もファムロイヤル監察官の指示で動いているわけでありまして……」
 僕が特命監察官の名を出したところで、ようやく襟元の締め付けが弛んだ。
「なんだぁ、ニィちゃんも同業者かよ」
 襟首を掴んでいた婦警が、さもつまらなさそうに舌打ちした。
 僕が本当の下着ドロなら、この後どんな目に遭わされていたのだろうか。

「いやあ、申し遅れました。特殊機動捜査隊のクロード・フジワラ巡査部長です」
 僕は少しでも相手の警戒心を解こうと、腰をかがめて頭を掻く。
「先ほど申し上げましたとおり、今は特命監察のフェデリア様の下働きをしている身でして……」
 連中のバックに付いているのは特命監察らしいから、この際、彼女の名前を最大限に利用させてもらおう。
 ファムロイヤル監察官の名前と、エリートたる特機隊の身分は効果てきめんだった。
 柔特たちは「もしかして、とんでもない大失敗をやらかしたのでは」と完全にひるんでいる。
 いける、これでこっちのペースだ。
 と、逃げ出す算段を考えていたときであった。
ここまで見た
「ほう、特機隊のクロード主任とは聞いたことのある名前だ」
 柔特連中の背後から唸るような声がした。
「確か、『帝都の若き英雄』でしたなあ」
 確認するように呟きながら立ち上がったのは女形の巨人であった。
 身長は2メートルをゆうに超え、厚みと幅から推測すると体重は確実に150キロはある。
 しかも、女子プロレスの悪役とは違い、実用的な筋肉の装甲に覆われた人間戦艦だ。

 彼女のことならよく知っている。
 ザオーネ・マクガイナ五段、前のオリンピックで無差別級を制したゴールドメダリストだ。
 無差別級はカテゴリー2までの肉体改造が認められている、化け物同士が戦うラグナロクである。
 その最終戦争を無傷で勝ち上がった彼女こそ、地上最強の女と呼ぶに相応しい。
 ちなみに、強壮ドリンクのCMで広く国民に知られた人気タレントでもある。

「なんでもこの兄さんは、戦闘サイボーグを素手で一捻りするって噂だ」
 ザオーネは端正な顔に薄ら笑いを浮かべ、両手の指関節をボキボキと鳴らしながら近寄ってくる。
 誰だ、そんな迷惑な噂を垂れ流しているのは。
「こんな機会は滅多にない。なあみんな、折角だから一手ご教授願おうじゃないか」
 ザオーネが手を伸ばしたと思ったら、僕は無重力状態に陥ったような感覚に包まれた。
 次の瞬間、全身の骨がバラバラになりそうな衝撃が襲いかかってきた。
 続いて、悲鳴も上げられないほどの強烈な激痛が追いかけてくる。
「…………かっ……はぁぁぁ……?」
 僕はザオーネの肩車を喰らい、3メートルの高さから畳に叩きつけられたのだ。
 脳震盪を起こし、意識が飛びかける。

「こんなもんじゃないでしょうが、英雄さまの実力は」
 ザオーネは僕の襟元を握り締め、軽々と引き起こした。
 そして背中に僕を担ぎ、前傾しながら思い切り前方へ投げ捨てる。
 彼女が五輪の決勝戦で見せた、必殺の背負い投げだ。
 壁に叩きつけられた僕は、あり得ないほどバウンドしてザオーネの足下に戻ってきた。
「おやまあ、特機隊の英雄さまはフェミニストらしいですな」
 割れそうな頭の中で爆笑が反響する。
 このままじゃ不具者にされる。
 何とか逃げようと上半身を起こすが、運動神経が麻痺してるのか足に力が入らない。
「ほぅ、まだ動けるのですかい。あれだけやりゃ、たいがいは伸びちまうもんですがね」
 二重にぼやけたザオーネが、意外そうに眉を開くのが見えた。

 2メートルを超える巨人が宙に舞い、フライング・ボディプレスで僕に飛びかかる。
 落下してきた巨大なバストが僕の顔面を押し潰した。
 彼女の得意技の一つ、下四方乳固めだ。
 通常人の尻よりはるかにでかいバストが僕の顔を挟み込み、呼吸を完全に止めた。
 この女は、なんだって僕につっかかるんだ。
 自らの強さを誇示したいのか。
 力の強弱は誰が見たって明らかだろうに。

「ふふふ、ティラーノのスパイめ。お前が人事一課長の意を受けて送り込まれた間者だってことは先刻ご承知よ」
 ザオーネが僕の耳元でとんでもないことを囁いた。
 なんだって。
 この女は何か勘違いしている。
「ミーナを突破口にして、術科特練に内紛を起こさせようって魂胆だろ? 情報は入ってるんだよ」

 何の情報だか知らないが、とにかく誤解を解くために話し合わないと。
 僕は降参の意を示すべく、唯一自由になる左手でザオーネの右脇腹を3度タップした。
 ところが僕のギブアップは受け入れられなかった。
 それどころか、超乳に体重が掛かり、僕を押し潰す圧力が更に上がる。
「こ、殺されるっ」
 この女は本気で僕を抹殺しようとしている。
 そう理解した瞬間、僕の理性は吹き飛んでいた。
ここまで見た
 タップを繰り返していた僕の左手が、意思とは関係なく人差し指を残して折り畳まれた。
 ピンと伸ばされた一本指がザオーネの右脇腹にめり込み、そのままズブズブと皮と肉を突き破る。
 錐のように脇腹を貫いた指先が肝臓に達した。
「ぎゃあぁぁぁーっ」
 巨人が身の丈に相応しい、耳をつんざく悲鳴を上げた。
 筋肉や骨格は強化していても、内臓は生身のままのようだ。
 文字どおり身を切られる痛みには、如何に金メダリストであろうが耐えられまい。

 ザオーネは跳ね起きようとしたが、僕は自由になった右腕で彼女のボディを抱え込む。
 なんとか逃れようと必死で暴れる彼女を、渾身の力でがっちりホールドする。
 その上で、更に左の人差し指をグリグリとこね回す。
「あぎゃぁぁぁーぁぁっ」
 再び絶叫が上がった。

 肝臓を覆っている腹膜は痛覚の固まりだ。
 肋骨による防備もないから、右脇腹に打撃を受ければ耐え難い苦痛が生じる。
 キンタマを蹴られたときの激痛を思い浮かべてくれれば、男なら簡単に理解できると思う。
 それを直接に指で抉られているのだから、如何に巨人といえども耐えられるわけがない。
 格闘技オンチの僕がどうしてこんな的確な反撃を思いついたのか、正直言って自分でもよく分からない。
 だいたい、僕は肝臓の正確な位置すら知らないはずなのに。
 これも種の保存本能がなせる業なのか。
 やがてザオーネは全体重を僕に預け、そのままピクリとも動かなくなった。
 死ぬほどの激痛で精神がおかしくなる前に、脳が意識をシャットダウンさせたのである。

 ザオーネが完全に動かなくなったのを確認してから、僕はゆっくりと指を引き抜いた。
 左手の人差し指は、付け根まで血でドロドロになっていた。
 ザオーネの巨体を押しのけながら、脂汗で湿ったユニタードで指を拭う。
 あまりに壮絶な決着に、柔特の連中は呆然となっている。
 自分たちのボスがこんな小男に負けるわけがないと、頭から決めつけていたのだろう。
 実際、途中までは圧倒的な力の差を見せつけ、一方的な殺戮を演じていたはずであった。
 それがどうしてこんな結末になったのか、理解できないでいるのだ。
「こ……こ……この……」
 ようやく現実を受け入れた数人が、ブルブルと痙攣を始める。
「こんのヤロォォォ」
 ボスの敵を討とうと、我に返った連中が一斉に飛び掛かってきた。

「来るなぁっ」
 僕が一喝すると、彼女らは雷に打たれたように縮み上がった。
 噂に聞く『帝都の若き英雄』への恐怖で腰が抜けたのであろうか、何人かがその場にへたり込む。
「今の僕には手加減ができない。死人まで出すのは本意じゃないから」
 攻撃本能を制御できない現在の状況では、これ以上力を解放するのは危険すぎる。
 ザオーネだって自ら離れようとしたんだから、そのまま逃してやるべきだった。
 如何に自分が殺されかけたからって、同じことを相手にやり返す必要なんかなかったのだ。

「それより、君たちのボスを医者に診せてあげて欲しい」
 外傷が小さいから出血はほとんどないが、体内では肝臓に開いた穴から大量に出血しているはずだ。
 見た目より、ずっと危険な状態なのだ。
「早く病院に運ばないと、取り返しのつかないことになるぞ」
 僕に諭され、ようやくことの重大さに気づいたのか、特練員たちは救急車の手配を始めた。

 右往左往の大騒ぎに紛れて、僕は柔道場を後にした。
 またコントロールしきれない力のせいで、要らぬ敵を作ってしまったようだ。
 地上最強の格闘家を撃破したというのに、勝利の感激は沸き上がってこない。
 ただ、虚しさと後味の悪さだけが長く尾を引く。

 この人間を越えた奇跡の力は、僕をどんどん不幸にしていくような気がした。
ここまで見た
  • 875
  •  
  • 2015/11/29(日) 15:13:08.41
投下終了です
ここまで見た
  • 876
  •  
  • 2015/11/30(月) 08:02:35.16
乙!
ここまで見た
  • 877
  •  
  • 2015/12/02(水) 01:36:19.75
まってました!
ここまで見た
  • 878
  •  
  • 2015/12/03(木) 21:37:31.97
ロボ戦の谷間のドラマ部分も結構好きだわ
ここまで見た
  • 879
  •  
  • 2015/12/04(金) 17:37:48.44
ザオーネさん、お大事にしてくださいね
肝臓と腹膜に穴をあけたら、あかんぞう
ここまで見た
  • 880
  •  
  • 2015/12/06(日) 20:51:05.41
原作知ってると面白さが倍増するんだよね
ザオーネさんの元キャラは敵の笛吹き坊ちゃんをヌッ殺すあの人だとか
ボブキャットやミーナ嬢はいわゆる3次ものだとか
ここまで見た
  • 881
  •  
  • 2015/12/11(金) 20:33:46.30
このスレ的にスパロボのヴァルシオーネやノーベルガンダムってどうなの?


個人的には髪コキされたいくらい好きなんだけど
ここまで見た
  • 882
  •  
  • 2015/12/11(金) 20:43:47.68
なにそれってのが正直なところ
スレ違いじゃないの?
ここまで見た
  • 883
  •  
  • 2015/12/11(金) 20:58:46.19
>>881
リュウセイ乙
ここまで見た

★お気に入り追加

このページを共有する
facebook twitter hatena line google mixi email
おすすめワード