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  • 2012/07/11(水) 21:01:28
今日は酒ディスカウント・ストアの繁栄と 凋落について考えてみたい。現在も至るとこ ろに酒ディスカウント・ストアが存在する が、成功している店は非常に少なくなった。 個店ごとに日本酒に力を入れたり、ワインの 品揃えを豊富にしたりと特色を出すべく奮闘 しているが、消費環境の厳しさもあり、一時 の勢いはすっかり消えてしまった感がある。

酒ディスカウント・ストアの勢いがあった のは80年代〜90年代であろう。当時、酒の 流通は、いわゆる「町の酒屋」が酒類販売免 許の規制により、独占状態にあった。御用聞 きスタイルで注文を取り、重たい酒類を家庭 まで配達していたのだ。私が子供の頃、70 年代はビールは缶ではなくビンが主流であ り、主婦が運ぶには大変重たい商品であっ た。価格も定価販売であり、今のような値引 き競争はなかったといって良いであろう。酒 屋もメーカーの流通政策により、アサヒ系、 キリン系など、関係の深いメーカーの製品を 多く売る努力をしていたようだ。町の酒屋は 家族による零細事業者がほとんどであり、昭 和57年において酒小売店109,621店のうち、 個人形態の事業所が90,353店である。その 後、酒小売店は平成19年時点で、47,696店 に半減し、個人形態の事業所は33,614店と1/3に激減している。

現在の状況をつくり、当時の業界慣習を 破ったのが酒ディスカウント・ストアであ る。業態の特徴は、ロードサイドに立地し、 低価格で集客し、ケース単位による大量販売 を実現するものである。低価格を実現するた めの工夫は以下の三つである。

?仕入原価の低減化 ケース売りの大量販売により、仕入原価を 下げる。当時は原価自体を下げるよりも、大 量販売によるリベートの取得を原資としてい た可能性がある。 ?セルフサービス、持ち帰りによる人件費の 低減 セルフサービス、配達しないことによる人 件費の削減である。低価格のため、当時は客 自身もそれを理解したため、積極的に受け容 れた。いわゆるモータリゼーション(自動車 の大衆化)により、持ち帰ることができる時 代が到来したのである。 ?ロードサイド出店による安い出店コスト ロードサイドによる悪い立地のため(当時 は)、安い家賃、広い敷地の入手のしやすさ に加えて、標準化による店舗投資の低減化が 可能となった。

要は、標準的な酒類小売店と比べて、大き く損益構造を変えることによって、低価格で も収益を出せる仕組みが酒ディスカウント・ ストアであり、それが時代に受け容れられ、 大きな成功を収めたと言える。仕入原価、人 件費、家賃、店舗設備等に対するコストを大 きく低下させることで、販売価格を下げる。 そしてその低価格で広い商圏(メインは自動 車客である)から集客を行い、大量販売を実 現して、利益を出すのである。コストの低減

→ 販売価格のダウン → 集客力の向

→ 大量販売による利益の確保 であ る。

しかしながら、これは容易にマネのできる 仕組みであったため、多くの新規参入があっ たほか、規制緩和による酒類販売免許の取得 の容易化により、GMS、スーパー、ドラッ グストア、ホームセンターにおいて同様に酒 類を低価格で販売したため酒ディスカウン ト・ストアの優位性は消失している。他業態 においては、はじめから集客手段と売上のか さ上げを狙った品揃えのため、利益度外視で 集客し、他の利益率の高い商品を同時購買し てもらうことによるメリットを狙った。例え ば、スーパーには生鮮食品があり、ドラッグ ストアには医薬品があり、ホームセンターに は園芸用品がある。

現在、酒ディスカウント・ストアにおいて は、冷凍食品やワイン、食器などの品揃えに より既存の業態からの脱却を図っているが、 もともと利益の取れる柱となる商品がなく、 ビールから発泡酒、発泡酒から第3のビール へと単価が下がっている中で他業態との競争 に勝てるのは一握りの店舗になると推測す る。

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