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  • 2009/09/19(土) 00:05:35
「お国のために」飼い猫クロ供出 富山の笹波さん 体験を本に

いまも耳に最期の声 「戦争は人も動物も不幸に」

 1945(昭和20)年1月。北海道小樽市に住んでいた笹波さんの自宅に回覧板が来た。

 「兵隊さんに毛皮を送るので家の犬猫は全部出すこと。出さない家は非国民として
厳罰に処し隣組から除外し罰する」という内容だった。

 当時、クロというメス猫を飼っていた。その2年ほど前に隣家から譲ってもらって以来、
かわいがってきた。寒い夜は一緒に布団にくるまった。「家族の一員」だった。

 供出に反対し泣き続けた。母から「たくさんの兵隊さんが死んでいるのです。
クロもお国のために役に立つのです」と諭された。

 供出当日、クロを入れた麻袋を背負い、指定された神社そばの空き地に向かった。
神社に近づくにつれ、猫や犬の悲鳴が聞こえてきた。袋のなかのクロが急に暴れ始めた。
空き地には多くの犬や猫の死骸(し・がい)が転がっていた。積雪で白いはずの空き地は、
血で真っ赤だった。とっさに逃げようとすると、丸太を持った男が怒鳴った。

「非国民になるぞ」。背中の袋をつかまれ、観念した。

 「ごめんね、クロ」。そう思いながら、きびすを返して、まもなくのことだった。
 「ギャー」
 耳をつんざくような悲鳴が背後から聞こえた。クロの声だった。

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