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  • 2015/11/29(日) 13:37:57.61
大きなのっぽの古時計といえば、おじいさんが生まれた朝に買ってきてから百年動き続けてきた、
ご自慢の時計として、この村に知られている。
おじいさんが亡くなったあと、奇しくも時計も止まり、動かなくなる。
時計は、遺品整理で誰も受け取らないから、粗大ゴミとして出される。
俺はそれが狙いだ。
捨てられている時計を、こっそりさらって家に持ち帰る。
そして、深夜、俺一人の修理が始まる。
俺はもう一度汚れた時計を分解し、部屋中に新しい交換用部品をばら撒き、
ウォーッと叫びながら、時計の歯車を交換し回る。
百年ものの時計は、時代の臭いがムンムン強烈で、俺のノスタルジック感を刺激する。
時計の中の長針短針は、もうすでに痛いほど古びている。
時報ベル音をチェックする。ボーン。
歯車の音、ねじをまく音や、アナログ時計独特の針音を、耳一杯に聞き込む。溜まんねえ。
いい音だぜ、ワッショイ! おじいさんワッショイ!と叫びながら、時刻を合わせる。
仕上げで、外観を清潔にする。
その時計には、カビの染みまでくっきりとあり、ツーンと臭って臭って堪らない。
その時計を手入れしてたおじいさんは、村で一番威勢が良かった、五分刈りで髭の、40代の、
ガチムチ野郎だった時期もあっただろうと、勝手に想像して、洗剤を一番臭い部分を押し当て、
思いきり磨きながら、ガチムチおじいさん臭ぇぜ!俺がピカピカにしてやるぜ!と絶叫し、 磨き布をいっそう激しく扱く。
他に艶出しやら何やらを吹き付け、 ガチムチおじいさんの時計を磨きながら、ウオッ!ウオッ!と唸りながら布を扱きまくる。
そろそろ限界だ。
俺はから拭きをし、ガチムチおじいさんが生まれた朝に買ってきた時の状態まで、思いっきりピカピカにした。
どうだ!気持良いか!俺も良いぜ!と叫びながら時計を眺める。
本当にガチムチおじいさんが蘇った気分で、ムチャクチャ気持ち良い。
ガチムチおじいさんの時計は、チクタクチクタク時を刻む。
ガチムチおじいさん、貴様の時計は俺が引き継ぐぜ!
俺の修理が済んだあと、時計はリビングに置く。
またいつか、俺が死ぬまで、時間を知らせ続ける。
時計にはそんなおじいさんの魂が宿ってあるんだぜ。

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