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- 2020/10/18(日) 08:34:59.45
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新型コロナウイルスの感染対策で企業がテレワークを進める中、オフィス内で働く障害者の仕事が減っている。知的障害者らは清掃や配送物仕分けといったオフィスでの勤務を前提にした働き方が多く、社員の出社減少の影響が直撃するため。コロナ禍による企業業績の悪化で解雇される障害者は増えており、障害者を巡る雇用情勢はさらに厳しくなりそうだ。(山田晃史)
◆オフィスワーク激減で…
「一緒に働く人はみんな仲が良かった。大好きな職場だったのに…」。軽い知的障害のある女性(48)=東京都大田区=は、肩を落とす。17年間勤めた食堂の運営会社から今月15日に解雇された。
東京都内の大手IT企業の社員食堂で週5日間、パートとしてテーブルの掃除やトレーの片付けなどを担当してきた。だが、3月から社員の大半はテレワークとなり、食堂を訪れる社員は激減。女性は長期間の休業を命じられ、結局食堂自体の閉鎖が決まった。
女性は高齢の母親と2人暮らし。貴重な収入だった月8万円の給料が失われ、生活切り詰めを強いられる。「お母さんが喜ぶから早く次の仕事を見つけたいけど…」。女性は言う。
◆「テレワーク定着、解雇は更に増えるのでは」
厚生労働省の調べで、今年3月から8月までの半年間に解雇された障害者は1475人と、前年同期に比べ34.9%の大幅増。知的障害者の保護者らでつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」の又村あおい常務理事は「テレワークを定着させる企業も多く、解雇はさらに増えるのではないか」と警戒する。
障害者雇用を支援する障害者雇用企業支援協会によると、テレワークの普及によりオフィスの清掃や機密書類のシュレッダー処理が減った。社員向けカフェや、視覚障害者による社内マッサージルームも休業や廃止になり、障害者の仕事は減少する。全社的なテレワークへの移行で、オフィスも大幅に縮小させる富士通グループの担当者は「障害者の仕事が少なくなり、彼らが在宅でできる仕事を探している」と明かす。
◆守られない法定雇用率 「できない」と決めつけないで
政府は、障害者を一定割合雇うことを義務付けた「法定雇用率」を企業に課している。現在は2.2%。1000人の企業なら22人の雇用が必要。だが厳しい罰則がないこともあり、コロナ感染拡大前の昨年時点でも達成企業は半数未満。1人も雇っていない企業も全体の3割以上ある。
政府は来春から法定雇用率を0.1%引き上げるが、雇用義務はさらに形骸化しかねない情勢だ。
「手をつなぐ会」の又村常務理事は「知的障害者に研修機会を提供してホームページ作成などをしてもらおうとする企業もある。企業は『障害者にこの仕事はできない』などと決め付けず、新しい仕事を見つける工夫をし、国はそれを支援すべきだ」と訴える。
障害者雇用 政府は障害者雇用促進法に基づき、全ての事業主に障害者の雇用を義務付けている。法定雇用率は5年に1度見直し、現在は企業が2.2%、国や地方自治体は2.5%。従業員100人超の企業で未達成だった場合、不足人数1人につき、月5万円の納付金を徴収されるが、同100人以下の企業は免除されている。逆に達成企業は超過1人につき、企業規模によって月2万1000円〜2万7000円を支給される。
東京新聞 2020年10月18日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/62552
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