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  • 2017/07/19(水) 04:37:17.77
正規社員の異動と転勤

解雇ルールの法制化を反対する学者により、正規社員は異動や転勤の義務があるため、非正規雇用と比べて待遇が
良く、そのため相対的に日本の解雇規制は厳しいのではないとの説明がなされているが、解雇規制が緩い米国でも
異動や転勤を従業員が希望することや、雇用者が従業員に他の職種・勤務地に異動命令をすることは可能である。

米国や欧米各国では異動・転勤は一般的であり、"Lateral Move"とも呼ばれキャリアアップの機会や、従業員の
不満やストレスの解消を目的としており、

-異なる環境や業務での新たな知識やスキルの取得。
-住宅手当、異動手当てによる給料増加
-現在の職場での不満や飽きの解消
-成果を上げる機会
-異なる職場や社内の理解を深めて専門性や責任感を養う
-昇進準備のため関連部署での勤務経験をつける

等の役割があるとされる[38]。

決まった職務がない契約でどんな業務でも従事する義務を負う代わりに雇用が保護されているので、日本の解雇規制
が厳しいわけではないとする論理とは正反対の受け止め方がされており、非正規労働者はむしろ異動・転勤という
キャリアアップの機会を否定されているという点で、マイナスと評価することができる。

また日本では以下の理由での転勤命令は

-業務上の必要性が存しない場合
-不当な動機・目的をもってなされたものである場合(退職勧奨拒否後の異動命令など)
-労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等
[39]

人事権の濫用とみなされ、転勤の拒否をした場合に会社が懲戒解雇をしたとしても無効となる。特に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益とは

-単身赴任手当や家族と会うための交通費の支給
-社宅の提供
-保育介護問題への配慮
-配偶者の就職の斡旋等

がなされているかが判断基準となる。これらの条件を考慮すれば正規社員に対して懲罰的な異動命令をすることは困難
であり、正規社員の待遇や雇用保護だけが優先される事由となる合理的説明とはならない。異動や転勤は能力開発や
社内人脈の強化でプラスの側面があることや、転勤を課すことは企業にとっても該当社員の人件費・福利厚生(社宅、
交通費)が増すことになることを考えると、正規社員の異動や転勤は法的に保護対象といえ、論点となるためには、人
事権の濫用が法的に認められている場合などに限るが、現状はそうした濫用は違法であり、拒否することができる。

転勤・異動にかんする判例には

-フジシール事件 大阪地判平12.8.28 労判793-13
-プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク(本訴)事件 神戸地判平16.8.31 労判880-52
-マリンクロットメディカル事件 東京地決平7.3.31 労判680-75
-朝日火災海上保険事件 東京地決平4.6.23 労判613-31
-日本電気事件 東京地判昭3.8.31 判時539-15
-北海道コカ・コーラボトリング事件 札幌地決平9.7.23 労判723-62
-明治図書出版事件 東京地決平14.12.27 労判861-69
-日本レストランシステム事件 大阪高判平17.1.25 労判890-27

等がある。

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